@デジタル迷子
- 2006/10/09
- 11:26

「さて、今日もインターネットに繋ごうかしら」
平凡な主婦がはまったチャットは、いつもと様子が違っていた。
3Dチャットで繰り広げられるちょっと不思議なお話
※結構、昔に書いたお話です。一番始めに填っていたチャットが簡単な3Dチャットだったので、それをヒントにしています。
『私はどこに?』 <デジタル迷子1話>
さて・・・今日もインターネットに繋ごうかしら」
祐子は最近、インターネットに懲りだした。
あれは半年前・・・・
やたらテレビなんかで煽るから、ブームに乗り遅れては
ダメだとばかりに、ローンを組んで初心者ながら
パソコンを始めることにしたのだ。
はじめは色んなHP(ホームページ)を見て回ったりしてたけど
チャットっていうものを知ってから、ずっとそればかりするように
なったのだ。ハンドルと言う便利なものがあることも
チャットの場で教えて貰った。
ハンドルっていうのは、インターネット上のニックネームのようなものでそれは、限りなく、匿名性のような性質を持っていた。
これが、今まで平凡な生活をしていた祐子の心を揺さぶったのだ。
だって・・・インターネット上なら「女子大生」にだって、「OL」にだってなんだってなれるのだもの・・・・
ほんとは、なんの取り柄もない普通の主婦。
でも、インターネットの上なら仮面をかぶっていろんな人になりきることもできる。
「さあ、今日は誰になってはいろうかな?」
祐子は複数のキャラクターを作ったために、メモをとっていた。
ファイルがたくさん有るなかで「kyara.txt」を開く。
---------------kyara.txt--------------
ハンドル:真智子 西新宿のOL 24歳 1月3日生まれ
性格 清楚なお嬢様 よく使う言葉「~ですこと」
現在チャットで知り合った「猛」くんとメール交換中
ハンドル:涼香 夜バーで働く少しお色気のある 25歳
性格 自由奔放 Sの毛あり たまに男言葉も使う
昼間に良くアクセスする。
よく使う言葉「かったるいの~」
ハンドル:美由紀 女子大生 21歳 5月23日生まれ
最近コギャルにハラを立てている オヤジをからかうのが好き
現在オヤジ系の「浩二郎」から迫られてる。
よく使う挨拶「やっほぉ~」
ハンドル:優馬 男ハンドル 24歳学生
今口説いてるのは、主婦の「美枝子」結構気に入られ出した。
ガラっぽい性格 チャット上では真智子の彼にも時々なる。
----------------------------------
そのほか、書ききれないほどのハンドルの山が出てくる。
総体的に女性が多いのは、自分が女であるからなのだろう・・・・
どれも祐子にとっては、かけがえのないキャラクターだった。
それぞれのキャラごとに、メールなどでおつき合いしてる人の
すべてのデータもその中に書き込んであった。
ふと、その中に・・見覚えのないハンドルをみつけた。
「はて? これ・・いつ使ったハンドルだっけ?」
メモの内容を見てみると、「anima」地球人 とだけあった。
「まっ・・いいか、地球人なんていう変わったキャラになりきるのも面白そう。」
そうつぶやいて、いつものチャットへ「anima」の名前でログインした。
一瞬、画面が揺れたような気がした。
でも、しばらくすると、すぐに元通りの、いつも遊んでる3Dチャットの画面が出たので安心した。
(なんだ・・・気のせいだったのね)そう思ってみんなが集まる広場にいつものように出現した。
「あれ?今日は知ったひとがいないなぁ」
そう思っていると、沢山の人からいきなり秘話が飛んできた。
秘話って言うのは、特定の人へだけメッセージを飛ばす時に用いるチャット用語だ。
<jon:>「anima!久しぶり どうしてたんだよー?」
<kein:>「anima あいたかったよーー地球の話、又聞かせてくれよ」
<kuru:>「ずっと待ってたんだぜ、昨日も今日も・・・どうしてたのさ?」
(え?何々?誰?この人達・・・なんで私のこと知ってるの?)
もしかしたら自分がどんな話しをしていたのか忘れてるだけかも知れない・・・
慌てていろんなメモを開いてみたけど、どこにもそれらしいメモは無かった。
(とりあえず”anima”は人気者らしい・・・)
(でもここはなんとか、乗り切らなければ・・・・)
「あ・・あの・・ごめんなさい、しばらく来なかったので、みなさんとのお話忘れちゃったの・・・・」
キーをたたいて打ったはずの画面から何も表示されない。
(あれ?どうしちゃったんだろ・・・)
なにか答えなくてはと、焦っているとどこかからキュルキュルという音がなって・・・
みんなの会話がスピーカーから流れてきた。
(え?なんで?いつから音声チャットにも対応できるようになったの?)
画面右にいるjonがいきなりくぐもった声で話しかけてきた。
jon:「ドーしちゃったんだよ・・・そんな古いアバターで・・・」
左側にいた二人も続けて話しかけ来た。
kuru:「そうだよ いつもの立体アバじゃないよ・・・」
kuru:「それに、音声出なくなったの?」
kein:「あ・・・そういや、anima音声出てない」
どうやら、このチャットは祐子がいつも入ってるチャットとは違うようだった。
秘話形式のときだけ画面に文字がでるらしい。
アバターって言うココでの姿に変わった様子はないはずなのに、他の人達には違って見えるようだ。
(どうしよう・・・・わたしのパソでも音声出るだろうか?)
不安に駆られてマイクに声を吹き込んでみた。
anima:「あの・・・音声でてます?」
jon:「あ・・・よかったぁ~ animaの声だぁ」
jon:「心配したぜ・・・animaじゃないのかと」
kuru:「でもアバターはそのままだな・・・」
kein:「animaの声には間違いないよ、だって俺の音声認識装置が
本人だって言ってるもん」
jon:「それなら心配いらないなぁ keinの音声認識装置は完璧だから」
(え?うそ?animaって・・・・ わたしなの?ほんとに)
(あ・・・でもどうしよう、animaの性格設定もなんにも知らない)
私はいったいどこのチャットに繋いだのかわからないまま
画面を見ながら途方にくれた・・・・
いったい・・・・animaって、どんな子なんだろ?どう演じればいいのだろ?
そんなとき、祐子は良いことを思いついた。
anima:「あ、ごめんなさい、あのね・・・実はしばらく記憶喪失に
なっちゃってたの。だからあんまり自分のこともわかんない・・・」
(我ながら、いい思いつきだわ・・・・)
祐子はコレで完璧だと思った。あとは会話の中からどんな性格の子なのか?
どんな会話をしていたのか?探っていけばいい。
今までにもキャラクターがごっちゃになった時に使った手だ。
幸い、どういう訳だかanimaの声が、私と同じ波長みたいだし・・・・
anima:「わたし、なにか話してた?あなた達と・・・」
anima:「あ、ごめんなさい、まだ記憶が完璧でないの」
jon:「なんだぁ~そうだったんだ・・言ってくれれば。ドラッグプログラム
添付して送ってあげたのにぃ~ 記憶喪失なんてバックアップとって
おけば回復できるんだよ頭に直接差し込むメモリー知らなかったの?」
kuru:「僕の星なら残りメモリさえあれば、復旧できるぜ・・・
なんで相談してくれなかったんだよぉ」
kein:「君の星ってそう言えば、どこだっけ?」
anima:「あ・・あの、ち・地球です。」
とっさにメモにあった内容を思いだし、彼らの問いに答えてみた。
でも、なんのことを言ってるんだろう?星って・・・?ドラッグプログラムって?
(そっか・・・ここは仮想空間、みんなどこかの星からって設定なのね)
そう納得して、話を合わせることにした。
animaは、祐子そのもののキャラだった。主婦でもあり、夢見る少女でもあった。
ただ違っていたのは現実の祐子より数倍も人気者なのだった。
姿も女神のような女性らしい。アバターが本人の心を表すようにプログラムされているとか?
(たとえようのない美しさだと言われて、少しいい気分になった)
このチャットは、普通の3Dならぬ立体映像のアバターらしく、手足の動きや表情さえも
なめらかに動く事が出来、このデジタル的なチャット空間に本当にいるような錯覚にも陥るらしい
彼らはみな、どこかからの惑星から交信している・・・と言うことだった。
祐子は、ここのチャットが、凄く気に入った。
今までのチャット自体が、なんだか子供じみて野暮ったく感じてきた。
「わたしも、もっとみんなのように同化したい・・・」
そこで、ここに詳しそうなひとに、ほかの人たちと同じチャットを味わうには
どうすればいいのか、聞いてみることにした。
それはとても簡単なことだった・・・
チャット画面に手をかざして、意識を集中すればいいらしい
無心に目をつぶり画面に手をかざした・・・
耳鳴りがして・・・次第に意識が遠のいた。
気がつくと3D空間にたっていた。でも、あたりには誰もいない・・・
「みんな何処?、何処行ったの?」
。・。・゚★・。・。☆・゚・。・゚。・。・゚★・。・。☆・゚・。・゚。・。・゚★・。・。☆・゚・。・゚。・。・゚★・。・。☆
正行が会社から戻ると、祐子のパソコンが付けっぱなしになってた。
「あいつ・・・また付け放しで・・・」
「あれ? シングルユーザーモード になってるぞ」
正行はなんのためらいもなく チャット画面を終了させて
何処に行ったかわからない祐子を探し続けた。
パソコンのハードランプがかすかに点滅してやがてそれも消えた。
注:「シングルユーザーモード」とは、チャットに繋ぐことが出来なくなった場合に表示されるメッセージである。
(主にインターネット接続に失敗したときに出る)
さて・・・今日もインターネットに繋ごうかしら」
祐子は最近、インターネットに懲りだした。
あれは半年前・・・・
やたらテレビなんかで煽るから、ブームに乗り遅れては
ダメだとばかりに、ローンを組んで初心者ながら
パソコンを始めることにしたのだ。
はじめは色んなHP(ホームページ)を見て回ったりしてたけど
チャットっていうものを知ってから、ずっとそればかりするように
なったのだ。ハンドルと言う便利なものがあることも
チャットの場で教えて貰った。
ハンドルっていうのは、インターネット上のニックネームのようなものでそれは、限りなく、匿名性のような性質を持っていた。
これが、今まで平凡な生活をしていた祐子の心を揺さぶったのだ。
だって・・・インターネット上なら「女子大生」にだって、「OL」にだってなんだってなれるのだもの・・・・
ほんとは、なんの取り柄もない普通の主婦。
でも、インターネットの上なら仮面をかぶっていろんな人になりきることもできる。
「さあ、今日は誰になってはいろうかな?」
祐子は複数のキャラクターを作ったために、メモをとっていた。
ファイルがたくさん有るなかで「kyara.txt」を開く。
---------------kyara.txt--------------
ハンドル:真智子 西新宿のOL 24歳 1月3日生まれ
性格 清楚なお嬢様 よく使う言葉「~ですこと」
現在チャットで知り合った「猛」くんとメール交換中
ハンドル:涼香 夜バーで働く少しお色気のある 25歳
性格 自由奔放 Sの毛あり たまに男言葉も使う
昼間に良くアクセスする。
よく使う言葉「かったるいの~」
ハンドル:美由紀 女子大生 21歳 5月23日生まれ
最近コギャルにハラを立てている オヤジをからかうのが好き
現在オヤジ系の「浩二郎」から迫られてる。
よく使う挨拶「やっほぉ~」
ハンドル:優馬 男ハンドル 24歳学生
今口説いてるのは、主婦の「美枝子」結構気に入られ出した。
ガラっぽい性格 チャット上では真智子の彼にも時々なる。
----------------------------------
そのほか、書ききれないほどのハンドルの山が出てくる。
総体的に女性が多いのは、自分が女であるからなのだろう・・・・
どれも祐子にとっては、かけがえのないキャラクターだった。
それぞれのキャラごとに、メールなどでおつき合いしてる人の
すべてのデータもその中に書き込んであった。
ふと、その中に・・見覚えのないハンドルをみつけた。
「はて? これ・・いつ使ったハンドルだっけ?」
メモの内容を見てみると、「anima」地球人 とだけあった。
「まっ・・いいか、地球人なんていう変わったキャラになりきるのも面白そう。」
そうつぶやいて、いつものチャットへ「anima」の名前でログインした。
一瞬、画面が揺れたような気がした。
でも、しばらくすると、すぐに元通りの、いつも遊んでる3Dチャットの画面が出たので安心した。
(なんだ・・・気のせいだったのね)そう思ってみんなが集まる広場にいつものように出現した。
「あれ?今日は知ったひとがいないなぁ」
そう思っていると、沢山の人からいきなり秘話が飛んできた。
秘話って言うのは、特定の人へだけメッセージを飛ばす時に用いるチャット用語だ。
<jon:>「anima!久しぶり どうしてたんだよー?」
<kein:>「anima あいたかったよーー地球の話、又聞かせてくれよ」
<kuru:>「ずっと待ってたんだぜ、昨日も今日も・・・どうしてたのさ?」
(え?何々?誰?この人達・・・なんで私のこと知ってるの?)
もしかしたら自分がどんな話しをしていたのか忘れてるだけかも知れない・・・
慌てていろんなメモを開いてみたけど、どこにもそれらしいメモは無かった。
(とりあえず”anima”は人気者らしい・・・)
(でもここはなんとか、乗り切らなければ・・・・)
「あ・・あの・・ごめんなさい、しばらく来なかったので、みなさんとのお話忘れちゃったの・・・・」
キーをたたいて打ったはずの画面から何も表示されない。
(あれ?どうしちゃったんだろ・・・)
なにか答えなくてはと、焦っているとどこかからキュルキュルという音がなって・・・
みんなの会話がスピーカーから流れてきた。
(え?なんで?いつから音声チャットにも対応できるようになったの?)
画面右にいるjonがいきなりくぐもった声で話しかけてきた。
jon:「ドーしちゃったんだよ・・・そんな古いアバターで・・・」
左側にいた二人も続けて話しかけ来た。
kuru:「そうだよ いつもの立体アバじゃないよ・・・」
kuru:「それに、音声出なくなったの?」
kein:「あ・・・そういや、anima音声出てない」
どうやら、このチャットは祐子がいつも入ってるチャットとは違うようだった。
秘話形式のときだけ画面に文字がでるらしい。
アバターって言うココでの姿に変わった様子はないはずなのに、他の人達には違って見えるようだ。
(どうしよう・・・・わたしのパソでも音声出るだろうか?)
不安に駆られてマイクに声を吹き込んでみた。
anima:「あの・・・音声でてます?」
jon:「あ・・・よかったぁ~ animaの声だぁ」
jon:「心配したぜ・・・animaじゃないのかと」
kuru:「でもアバターはそのままだな・・・」
kein:「animaの声には間違いないよ、だって俺の音声認識装置が
本人だって言ってるもん」
jon:「それなら心配いらないなぁ keinの音声認識装置は完璧だから」
(え?うそ?animaって・・・・ わたしなの?ほんとに)
(あ・・・でもどうしよう、animaの性格設定もなんにも知らない)
私はいったいどこのチャットに繋いだのかわからないまま
画面を見ながら途方にくれた・・・・
いったい・・・・animaって、どんな子なんだろ?どう演じればいいのだろ?
そんなとき、祐子は良いことを思いついた。
anima:「あ、ごめんなさい、あのね・・・実はしばらく記憶喪失に
なっちゃってたの。だからあんまり自分のこともわかんない・・・」
(我ながら、いい思いつきだわ・・・・)
祐子はコレで完璧だと思った。あとは会話の中からどんな性格の子なのか?
どんな会話をしていたのか?探っていけばいい。
今までにもキャラクターがごっちゃになった時に使った手だ。
幸い、どういう訳だかanimaの声が、私と同じ波長みたいだし・・・・
anima:「わたし、なにか話してた?あなた達と・・・」
anima:「あ、ごめんなさい、まだ記憶が完璧でないの」
jon:「なんだぁ~そうだったんだ・・言ってくれれば。ドラッグプログラム
添付して送ってあげたのにぃ~ 記憶喪失なんてバックアップとって
おけば回復できるんだよ頭に直接差し込むメモリー知らなかったの?」
kuru:「僕の星なら残りメモリさえあれば、復旧できるぜ・・・
なんで相談してくれなかったんだよぉ」
kein:「君の星ってそう言えば、どこだっけ?」
anima:「あ・・あの、ち・地球です。」
とっさにメモにあった内容を思いだし、彼らの問いに答えてみた。
でも、なんのことを言ってるんだろう?星って・・・?ドラッグプログラムって?
(そっか・・・ここは仮想空間、みんなどこかの星からって設定なのね)
そう納得して、話を合わせることにした。
animaは、祐子そのもののキャラだった。主婦でもあり、夢見る少女でもあった。
ただ違っていたのは現実の祐子より数倍も人気者なのだった。
姿も女神のような女性らしい。アバターが本人の心を表すようにプログラムされているとか?
(たとえようのない美しさだと言われて、少しいい気分になった)
このチャットは、普通の3Dならぬ立体映像のアバターらしく、手足の動きや表情さえも
なめらかに動く事が出来、このデジタル的なチャット空間に本当にいるような錯覚にも陥るらしい
彼らはみな、どこかからの惑星から交信している・・・と言うことだった。
祐子は、ここのチャットが、凄く気に入った。
今までのチャット自体が、なんだか子供じみて野暮ったく感じてきた。
「わたしも、もっとみんなのように同化したい・・・」
そこで、ここに詳しそうなひとに、ほかの人たちと同じチャットを味わうには
どうすればいいのか、聞いてみることにした。
それはとても簡単なことだった・・・
チャット画面に手をかざして、意識を集中すればいいらしい
無心に目をつぶり画面に手をかざした・・・
耳鳴りがして・・・次第に意識が遠のいた。
気がつくと3D空間にたっていた。でも、あたりには誰もいない・・・
「みんな何処?、何処行ったの?」
。・。・゚★・。・。☆・゚・。・゚。・。・゚★・。・。☆・゚・。・゚。・。・゚★・。・。☆・゚・。・゚。・。・゚★・。・。☆
正行が会社から戻ると、祐子のパソコンが付けっぱなしになってた。
「あいつ・・・また付け放しで・・・」
「あれ? シングルユーザーモード になってるぞ」
正行はなんのためらいもなく チャット画面を終了させて
何処に行ったかわからない祐子を探し続けた。
パソコンのハードランプがかすかに点滅してやがてそれも消えた。
注:「シングルユーザーモード」とは、チャットに繋ぐことが出来なくなった場合に表示されるメッセージである。
(主にインターネット接続に失敗したときに出る)
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